●ワンポイントコラム● |
●車体修理(2005/12/26)
こんなこともあります。
先日会社に持込まれた、車椅子ハンドボール競技で使用している車椅子だ。(写真)
車軸受けパイプも修正されキャンバー角が消滅! | 修理完成 |
なんか変だぞと、一発で分かった人もいるでしょう。
そもそも、車軸受けのパイプがひび割れてしまったので、溶接修理を近所の鉄工所に頼んだそうだ。そこの部分は丁寧に修理されて仕上がったのだが、なんとも親切なそこの職人さんが、わざわざキャンバー角を付けるために曲げてあるその車軸受けを、こともあろうに真直ぐに修正してくれたそうだ(笑→悲)。
持込んだ人には「曲がったパイプもサービスで真直ぐにしておいたからね!」と得意げに言っていたそうだが、受取った時は車輪も付いていなくて、職人さんのサービス仕事は分からずじまい。後日車輪を付けて、アレ〜!と、気づいた。
腕は良くても車いすに対する理解が、ちょっと足りなかったかな。でも、結局その職人さんには何も言えずじまい。何とか修正できてよかった(車体と車輪の隙間が多いのは、当社のミスではなく、本人のボディサイズによるものです。蛇足かな。)
●「重さ」(2005/12/8)
車いすカタログ項目の中で「重量」というのがある。比較的誰にでも分かりやすく、かつ重要な項目の一つだ。
車椅子の重量表示は、もちろん車いすそのものの重さのことであるが、「車いすの重さ」には別の意味合いも入ってくる。
一つはもちろん本体そのものの「重さ」で、もっとも重要であることには違いないが、あまりに軽量化しすぎて耐久性を損なったり、あるいはその結果製作精度が落ちて、車いす駆動が重くなったりでは、本末転倒である。
二つ目は、持ちあげる時の「重さ」である。介助者や使用者が車いすを持ち上げる場合は、重量のみならず「持ち易さ」がポイントになる。車いすを体からなるべく離さず、横にしないで縦に持つことが、重さを感じないコツである。また、持ち上げる動作の殆どが「車載」なので、前述の姿勢で積み込むことができるかどうかは、「重さ」を車いす以上に左右する。
三つ目は、駆動時の「重さ」である。せっかく車いす本体の重量が軽くても、駆動しにくかったり、車輪系の性能が悪かったりでは、重い車いすになってしまう。使用者の姿勢や駆動動作、後輪車軸位置、キャスターと後輪の重量バランスなどが影響してくる。しかし、もっと影響するのは、前にも書いた、「空気圧」や「髪の毛」の方だ。私の車いすは、駅などで押してもらう場合、「軽いですね〜」とよく言われる。それほど手入れは良くない方であることを考えれば、いかに他の車いすをもっと軽く駆動できる要素が潜んでいるかが、推測できるのだ。
番外の重要事項は、いうまでもなく自らの体重である、自戒をこめて・・・。
●キャスター(2005/10/23)
キャスターは車輪径が小さいので、でこぼこした道路では大きな抵抗が発生するが、フラットな室内では、3インチ程度のキャスターでもスムーズに走る。
しかし、室内でも大きな抵抗が発生する場合がある。その原因は「髪の毛」である。キャスター車輪の軸は床面から約63mm(5インチキャスターの場合)の比較的床に近い場所にあるので、長い髪の毛がキャスター車輪の軸に絡みやすいのである。
たかが髪の毛で・・・と侮れない。細い髪の毛が少しずつ車軸に絡まり、じわじわとベアリングを圧迫していき、しまいにはベアリングのカバーを破壊するまでになります。
もちろん、途中でキャスターの回転が渋くなるので、たいていはそこで気づくのであるが、簡易型の電動車いすを使用している場合などには、その渋さを電動のパワーで消してしまうので、気づくのが遅くなり、前述した状態までベアリングが破壊されてしまうのである。
特に、施設などで、髪の毛が多く落ちている浴室の洗い場などを走行した場合には拾い易いのでその後の点検をしっかりしましょう。
「髪は長い友達」でありたいものですが、キャスターにとって抜けた髪には要注意ですね。
●タイヤ(2005/7/30)
『タイヤは命を乗せている』とは、大手タイヤメーカーの有名なCMコピーである。
自動車などの移動機器は目覚しい進歩を遂げているが、自動車開発当初はエンジンやフレーム、ブレーキ、ハンドルやサスペンションといった技術に目が行ったが、ある程度スピードが出るようになると、タイヤが重要な要素として注目された。エンジンのパワーを伝えるのも、ブレーキやハンドル操作を地面に伝えるのもすべてタイヤだからである。
車いすは自動車ほどスピードが出ないので、『命を・・・』までは行かないが、結構重要な要素であるのだが、選択は以外におろそかにされがちだ。
タイヤ・キャスターのサイズはよく議論されるが、その特徴や性能はあまり吟味されない。
先日、砂浜用の車いす『ランディーズ』に試乗してみた。この低圧幅広タイヤでなければ、確かに砂浜の上を人を乗せて移動するのは困難だ。(以前、普通の車いすで、合板を2枚交互に敷き詰めて移動してみたことはあったが・・・。)また、雪道ではトレッド面にキャラメルの様なブロックがついた”冬用タイヤ”が威力を発揮することになる。タイヤをいくら回しても進まない現実は、なんともいえぬ虚無感が沸いてくるものだ。
つまり、車いすの場合は使用環境に適合したタイヤがポイントになる。例えば、室内専用の車いすで段差の心配が無ければ、ソリッドタイヤでも良く、空気圧調整やパンクの心配が無いことは、メンテナンスの手間が省けることでもあり、空気圧調整が不要ということは裏を返せば、タイヤの性能が常に一定であることにもなる。車いすが”重くなった”という訴えは、殆どが空気圧不足によることは言うまでもない。
また屋外で主に使用する場合、タイヤの磨耗が発生する。特に顕著なのがコンクリート路面の場合で、アスファルトより明らかに磨耗が早い。さらに言えば、直線的にコンクリート路面を走る場合はそれほどでもないが、細かにターンを繰り返す作業がある場合などは、顕著に磨耗が早い。コンクリート床面で働いている車いす使用者のタイヤが一番磨耗しやすいので、当然その場合は、トレッド面の厚みがあった方がいい訳だ。
もちろん、環境との取り合わせが、タイヤ選択の決定権を握っているわけではない、駆動しやすくするための車軸位置やタイヤ系などは基本であるし、まだたくさんあるが、オーット、自重も忘れないように!(自戒をこめて・・・)
●ブレーキ(2005/7/1)
自動車のブレーキと違い、走行のスピードを抑えるためのブレーキは、殆どの車いすには付いていません。介助者が操作するブレーキが付いているものもありますが、左右バラバラの力で掛かるので、車いすが左右に振れ不安定になり易いので注意しましょう。
自力で操作できる場合は、ハンドリムで行った方が良いでしょう。
駐車ブレーキは様々な種類がありますが、一般的なのはタックル方式と呼ばれる物で、リンク機構を用いています。
引いてロックする物や押してロックさせる物、両方の機能を持った物がありますが、車いすからの移乗の際は、引いて操作する方が、他の物にぶつかってブレーキが外れる可能性が低いので、お勧めします。
でも一番重要なことは、ブレーキはタイヤを止める機能なので、タイヤの空気圧や摩耗のチェックです。
●仮合わせ(20057/12)
車いすの適合の話ですが、微妙な位置調整や図面では見えにくい機能性は、やはり現物で試すのが一番です。
一例を挙げます。下の写真は作業療法士さんが自分で材料を揃えて、加工して取り付けてありました。もちろん実際の場面で使用していました。
見てくれはそれほど誉められませんが、実際に使用し、不具合や改良点がすぐ手に取るようにわかるので、製作する側としては大変助かります。また、製作コストも抑えられます。
本人の動作機能の把握などは、日常でかかわっている作業療法士さんとの連携が欠かせません。
最終的にフィットさせるためには、このような連携や経験、試行錯誤が必要です。それを惜しまないようにしたいと思っております。